温熱環境は、断熱性と気密性で作られる -自然で快適な家づくりに必要なこと-
伝統的に日本の家づくりは「夏を旨(むね)とすべき」とされてきました。昔は現代のようにエアコンが普及していませんから、夏いかに過ごしやすくするかが重点となっていました。冬は、暖房や厚着でしのげますが、夏をいかにしのぐか、そのため「風通し」などの夏仕様が発達したのでした。しかし、その結果、冬に寒い家が多くなり、今度は暖房に焦点があてられるようになりましたが、そこに省エネ問題が浮上、今度は断熱材の問題が重要になってきたのです。従って、「温熱環境」を考える際は、単に、快適な温度の家ということではなく、断熱、省エネの観点から考える必要がでてきました。
(1)住宅品確法、温熱環境 等級4とは?
そもそも住宅にはどのような断熱が必要なのか?これに対し、昭和54年に施工された「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主の判断の基準」という法律がベースとなり、平成11年までに3回に渡って改正され今日に至っています。
この3回の改正を、まず昭和55年基準では「旧省エネ基準」といい、平成4年の改正基準では「省エネルギー仕様」といい、平成11年基準では「次世代省エネルギー」といっています。そして住宅品確法では、これら基準により等級を定めています。すなわち、等級1は「規定なし、断熱財は入れなくても違法ではない」、等級2は「エネルギー消費量を削減、旧省エネルギー基準」、等級3は「等級2より30~60%のエネルギー消費量を削減、新省エネ基準(平成4年基準)」、そして等級4は「等級3より15~50%のエネルギー消費量を削減、次世代省エネ基準」と定められています。ただ、これらは建築主に努力義務を課したもので、罰則を伴う法律ではありません。さらに、最近の傾向では、一般的な建売住宅でも、おおよそ等級3はほぼ満たされていると言われています。
(2)断熱材は、快適な温熱環境を作ることができるのか?
そもそも日本において断熱材が生まれた理由は、省エネの観点をいれながら、冬を温かくすごすということにありました。実際、断熱は室温を上昇させるように働きます。冬は寒い外気温を断熱在によってシャッタアウトすることにより、温かい室内環境を実現できます。しかし、この状態で夏を考えると、断熱効果の高い部屋では、何もしなければ、外気温以上に温度が上がっていくことになります。
「夏を旨(むね)とすべき」とした伝統の家では、冬は寒いから、断熱をする。すると、今度は夏が暑くてたまらない状態になってきた。しかしそれでも断熱を推進するのは、どういう訳か。この答がエアコンの普及です。そして断熱にこだわるのは、省エネや環境への負荷という問題を考えているからです。暑い夏、外部と断熱材によって遮断されていれば、冷房の使用も弱くて済むことになります。また冬も、そもそも断熱材によって室温の上昇傾向にあるところにエアコンをいれれば、これも弱くてすむ、結局エネルギーコストが安くつくという考え方です。この考え方の前提には、エアコン(冷暖房)が廉価で各家庭にまで普及しているということがあるといえます。
(3)温熱環境と家づくり
結局、温熱環境を考えた家づくりとは、断熱性と気密性を兼ね備えた家ということになります。断熱性能については、断熱性能のことを一般的にQ値(熱損失係数)と呼び、室内外の温度差が1℃の時に建物全体から1時間に逃げる熱量を床面積で割ったもので、これが小さければ小さいほど断熱性が高い建物ということができます。また気密性に関しては、C値(相当隙間面積)というものがあり、建物全体の隙間面積(c㎡)を述べ床面積で割った面積となります。また気密性に関しては、換気ということも大切な要素となります。換気をどうするかの問題も、このC値によって変わってきます。理想的なのは、熱を逃さない24時間換気により、新鮮な空気を常に確保するということになります。また高気密であればあるほど、このような状態に持ち込むことができます。
快適な温熱環境の家づくりは、結局のところいろいろな要素のバランスによって決まってくるでしょう。その要素とは、まず品確法の定める等級4(次世代省エネ基準)、断熱性能Q値、そして気密性のC値ということになるでしょう。